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10年ぶりの映画体験「銀河鉄道の夜」
わが末吉家は、セレブな家系ではないので、ファミコンも買ってもらった経験はないのですが、無条件にいただいたのが、たっぷりの愛情と(時には鉄拳制裁ありですが…)本でした。>父ちゃん、母ちゃんありがとう!! うちは洋服はおさがりでも、本だけはジャンルを問わずたくさん買い与えてもらいました。夜、寝る時に母親が本を枕元で読むとよく眠れたそうです。

大人になってからは専門書を読むことはあっても、小説はめったに読むことはありませんが、宮沢賢治とサン・テグジュペリの世界観は子供の頃から好きで今でも比較的記憶に残っています。

今日は、川崎の方で賢治原作「銀河鉄道の夜」の映画を見てきました。実は、映画館なんて10数年ぶりです。はい、映画産業を斜陽させた自宅でビデオを見るインドア派ですw 賢治の独特の世界観は、実写化するのが大変だろうなと思っていたのですが、監督、役者さん、スタッフの皆さんの想いがこもっていて雰囲気のある素敵な作品になっていました。あの内容を1時間でまとめるのってすごいと思いました。関係者の皆さん本当にお疲れ様でした!特に舞台挨拶で役者さんよりも饒舌にMCをこなしていた秋原監督。多芸です。私自身ほとんど忘れていたのですが、原作を読んだことがない人には、最初のつかみまでが今ひとつ分かりにくいかもしれませんが…

個人的な意見ですが、奢侈財(ぜいたくな財:経済的には消費財と違い、あってもなくても生活にはこまることはないタイプの財)である映画にお金を払ってまで見るという行為は、日常にちょっと疲れたときに、「よし、元気をもらったぞ!」というタイプと生き急いだり、調子に乗りすぎた自分への自省として「今一度、自分の人生を振り返ってみよう」というタイプがあるかと思うのですが、この映画は私には後者でした。決して、川崎からの帰りにアドレナリンがびんびんでてくる感じではないのですが、幸せって何だろう?友情とは?自分は何のためにこの世にいるの?とふと自分自身に考えさせる味わいのある素敵な映画でした。映像もきれいで、わがアグリ部の仲間・葛西君が見たら泣いて喜びそうな故郷青森のすばらしい景色です。うーん、何かもう一度じっくり見たくなる映画でした。配給の問題もあるのでしょうが、新宿とか渋谷でも見れたらいいのですが… ネットでコンテンツ課金で見れるようにしてもらいたいものです。(システムぐらいうちで面倒みるのに…)

と静かな感動を覚えつつも、次のアポがあるので速攻で横浜に移動しました。お会いしたのは証券会社の方なのですが、仕事そっちのけで、コンテンツビジネス界の問題のブレストへとまた得意の脱線話になってしまいました。以下、ブログというより今日のブレストのまとめです。

●映画市場の現状
ちょっと今手元にあるデータが古くて恐縮なのですが、日本映画製作者連盟資料と外国映画輸入配給協会の統計資料によると、確かに95年までは落ち込んでいたのですが、シネコンなどの普及のおかげで95年以降、映画館数の増加とともに消費者が映画に戻ってきているのが読み取れます。2004年で1年間に約1.7億人の人が映画を見に行っているので、平均すると一人当たり1年に1.4回は映画館に足を運んでいることになります。これに流通量(視聴時間)を掛け合わせたものが、興行収入になります。このデータは、平成12年で約1708億円になります。これも96年から穏やかに回復しています。実際のパイは、これにテレビ、ビデオ販売・レンタルなどの2次利用分を含めれば、さらに倍近く大きくなります。つまり、映画界全体としての市場規模は縮小傾向ではないにもかかわらず、制作サイドと著作権を管理する出資サイドの間で相当動脈硬化を起こしていると類推できます。事実、私の知る若い映画監督たちも日夜資金繰りに苦労しています。

●資金調達の現状「製作委員会モデル」
配給会社、テレビ局、出版社などコンテンツを流通させる資金・ノウハウをもつ事業者が出資して製作委員会(民法上の任意組合)を組織し、制作会社に制作を委託します。コンテンツの著作権は製作委員会が保有するケースがほとんどです。出資のリスクが分散できるメリットはありますが、委員会の力が絶対で、コンテンツの制作サイドに権利が残らないため、いわゆる下請け構造からぬけられず、親だけ肥えて子はジリ貧になりがちです。
才能ある(なくても少なくともマーケットで評価を受けられる状態は必要)若い制作者には、こういう受託型のビジネスモデルから、自分で企画立案し、資金調達・回収できるスキームが必須のように思われます。

●資金流通のもう一つの可能性
最近、証券会社が媒介して、映画の出資金を個人投資家に求める映画ファンドがではじめましたが、版権の問題、分配の問題で必ずしも成功しているとはいえない状況です。個人的に面白いのは、信託会社を使ったスキームかなと思います。

従来、金銭や動産や土地に限定されていた信託財産に、2004年の信託法の改正で、著作権などの知的財産権でも信託が可能となりました。この改正によって、作品からの収益を配当などの原資に見込んだファンドを作って、個人投資家から広く資金を募ったり、銀行から融資を受けたりする仕組みが可能になりそうです。

制作会社が著作権を保持したまま、自前で制作資金を確保し、良質な作品づくりに反映させることができれば、もっともっと市場が活性化しそうです。信託業のプレーヤーを信託銀行に限定しないように改正できれば、さらにたくさんの事業者が参入できそうです。

信託業者へのリスクをさらに分散させるためにも、これからはネットでのコンテンツ課金(少額決済のスキームも必要)を充実させることが必須です。これにより回収リスクを少なくできます。加えて、アメリカの完成保証制度のように、コンテンツの企画を持つ独立した制作会社を設け、制作前に配給会社、テレビ局などに企画の趣旨を説明し、コンテンツとの事前販売契約(プリセールス)を結び、プリセールスを前提(担保として)に金融機関、投資家から制作会社に資金を提供するスキームも面白そうです。

私は、根っからの自由主義者なので、フランスやイギリスのような政策税制で一分野でしかない映画産業を保護する必要はまったく感じませんが、映画、コンテンツを愛する人々の知恵で自己解決できるように頭と知恵を働かせていきたいものです。自分のケツは自分で拭く!

映画とは、しょせん奢侈財です。
なくても日常には何ら困らない。
でもそんな奢侈財も許容できない社会に私は住みたくない。

なんか銀河鉄道とはまったく関係のない話になってしまいましたが、日々悪戦苦闘しているすべてのコンテンツ制作に携わる人々にエールを送ります。私は、賢治のような感性はまったく持ち合わせていないので、論理をつかさどるという左脳の方で私なりに少しでも貢献できればいいなと思う一日でした。

何やら、堅い話になったので最後にご飯処の紹介です。品川アトレビルにある「リトルママン」で食事して帰りました。ここは、料理学校でクラスメートだった方が勤めていて一度お邪魔したかのですが、なかなか品川に行く機会がなく、今日が初リトルママンでしたw
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私がいただいたのは、玄米野菜カレー(600円)とキャロリンゴジュース(380円)です。マクロビオティックの中ではとても良心的なお値段です。味もとてもやさしい味でおいしくいただきました。ごちそうさまでした!!
by sue0706 | 2006-11-05 23:48 | 食べ歩き日記


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